氷河湖拡大、定説に風穴? 京大院生「温暖化」覆す故郷ネパール命がけ調査(産経新聞)

 ヒマラヤ山系にあるネパール最大の氷河湖で、地球温暖化により氷が解けて湖が拡大し、決壊する恐れが指摘されているイムジャ湖について、京都大学大学院生が独自に現地調査を実施。湖の拡大は温暖化ではなく、ほぼ一定方向に吹き続ける強風が氷河を砕き割ることが原因との新説を打ち立てた。院生はネパール生まれで、故郷の危機に役立とうと命がけで観測を行い、「他の氷河湖も同様の危機にさらされている可能性がある」と推察。専門家も「盲点だった」と評価しており、定説に風穴を開ける可能性もある。

 調査を行ったのは、同大学院工学研究科の大泉伝(つたお)さん(29)。両親の仕事の都合でネパールで生まれ、幼少期を過ごした。

 都市環境工学を専攻し、気温の変動で起こる災害などを研究するうちに、イムジャ湖が決壊し、下流域が大洪水になる危機にさらされていることを不安視。「氷河が崩れる仕組みを調べて事前に防ぎ、故郷を守りたい」と思いをつのらせ、昨年10月に現地で単独の観測調査を実施した。

 氷河湖の拡大は、地球温暖化の影響で氷が解け、水量が増えるのが原因というのがこれまでの定説。大泉さんも当初、この説を裏付けるため、土が堆積(たいせき)した氷河の温度を調べた。ところが、土の下の氷河は定温に保たれ、周辺気温の上昇が融解の原因とは考えにくいことが判明。大泉さんは別の原因について考えた。

 そこで着目したのが、湖面に浮かぶ幅1〜4メートルにおよぶ多数の氷塊と、湖岸に吹きすさぶ強風との因果関係。湖岸の氷河の表面に数カ所にわたり、砂漠で風化した岩のような大きなひびが入っていることがヒントとなった。

 風速や風向き、気温などのデータを、5分間隔で約100時間にわたって観測。その結果、昼間に気温が上がると上昇気流が発生して南西方向の風が強まり、主に北東側の氷河を直撃し、風化で氷河を砕き割るという仮説にたどり着いた。

 イムジャ湖はエベレスト山麓(さんろく)の標高約5千メートルの地にある。近くには高山病による死者が多発する危険地帯もあり、過酷な環境下で、観測は困難を極めた。大泉さん自身も滞在中に原因不明のぜんそくを患ったが、故郷への思いと研究者としての責任感から調査をまっとうした。

 今回の研究成果について、京大防災研究所の山敷庸亮准教授は「風が氷河湖拡大の原因になるという説は盲点で、新たな視点。世界の科学者に議論してもらいたい」と評価。大泉さんは「補強壁の導入など、新説が拡大防止に役立つきっかけになれば」と期待を寄せている。

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【用語解説】氷河湖

 太古の氷河期に成長した氷河が解けて形成される湖。ヒマラヤ山系では、イムジャ湖のほかにも多くの氷河湖がある。貯水量が過度に増えて決壊すると激しい土石流を伴う洪水が起こり、下流域に甚大な被害をもたらす恐れがある。イムジャ湖は年々拡大しており、最も危険性が高い湖の一つとして警戒されている。

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